これはフィクション

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8/1 遠くへ行きたいという願いを叶えるために

子供の頃、カリフォルニア州ロサンゼルスの、

特筆すべき何かが特にない町に住んでいた。

町には踏切がひとつだけあって、貨物車がときおり通った。

 

父親の社用車の茶色いBuickで、日系スーパーに買い物に行くとき、

そこで足止めを食らう。

暫く待っていると後ろから轟音が聞こえてきて、空気が揺れて鼻がかゆくなるように錯覚する。

大きなハーレーに乗った大男が父の車の横を抜けて、一馬身前に停まる。

おかっぱでイルカのTシャツを着たまだ小さい私がぢっと見ていると、

刺青だらけの後部座席の女が笑いかけて手を振った。

 

ロスからラスベガスの間に、長い、何も無い道がある。

ラスベガスに家族旅行に連れて行ってもらったとき、

ここで父親のボロいビュイックが壊れたらどうしようと思ったが壊れなかった。

BarstowだかCalicoだとか中間に町っぽいものがあった気がするが、

それ以外は本当になにもない。ドラゴンボールに出てくる荒野のようだった。

いつしか私は、そこを走るのが夢になった。

何に乗るのかもよくわかってなかった。

誰もいない、何も無い道を、夜も昼も、ただものすごいスピードで駆け抜けたかった。

 

つまりは子供の頃から頭が悪かったのかもしれない。

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ラリー情報誌?frmと長距離を走りたい人のための雑誌、bigtankマガジン。

 

テレビでX-gamesを見ることも多くて、音楽も、競技も全部かっこいいと思った。

学校では皆スケボーに興じた。家にハーフパイプまで作った馬鹿もいた。

いい馬鹿だ。でも私は違うと思った。私はバイクで輝くんだと思った。

 

それから10年あまりが経って、時間はあまりにも残酷で、

私はなぜか外回りの営業をしている。

その夢に向かってなにもしていなかった。

そもそも砂漠とか長距離を走るには技術が必要だ。

 

で、言ってみた川越のウエストポイント。

全日本モトクロスとかで使われるでかいコースなど

 

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4stの競技車両(ナンバーはとれない

 

平日でレンタル車両を使うのは私一人だった。

他の客は例の全日本にも使われるでかいコースで20mとか飛んでいる。

父親と来ている子供がいる。

 女一人で平日に初めて来るというのが気になるのか、

社長さんがキック始動の仕方や曲がる練習の仕方、

コース案内などして一緒に走ってくれた。

 

少し慣れて、フープスなどがあるコースに後をついていく。

二週したあと、

「こわくないの」

 「こわくないです」

むしろ私は今までここに来なかった自分が怖かった。楽しかった。

「でもひとりだとつまんないね?」

私は黙ってしまった。

 

国内のレースに出たり、いつかはBajaやダカールにも行きたいと思えるようになった。

私には夢があると思う。夢しかない。

まあ嫌で嫌で仕方がない仕事もあるが。

 

もっと画像を貼りたかったがはてぶろが重いのでこのへんで。