これはフィクション

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10/17/2012   うつとADHDという謎(1)

Q 今谷さん就職したのにこんな時間になにしてんの

A 休職中です

 

 最初に診断を受けたのはうつのほうだった。ある日突然のことだ。カーテンから差し込む日が眩しかった記憶がある。大学に持っていく課題も、教科書も、なにもかも揃っていて、時間通りに目を開けた。だが、全く身体が動く感じがしない。全くだ。意味がわからなかった。

 きっと、疲れているんだ。昨日だって遅くまで課題をやって、本を読みながらウイスキーを飲んでいたし。今日は休もう。休んで寝よう。その日は風呂も入らず、寝巻きのままぼんやりとベッドの中で携帯を見たりして過ごした。身体が重かった。食事も面倒で、仕方なくトイレだけは行った。

 翌日になっても、身体の動かない感じは治っていなかった。その日の授業も休んだ。医者に行こうかと考えたがどこの科にかかればいいのかわからない。全身がだるいのは肝臓が悪いのだろうか?かなり肩こりがする気がするからそれでやる気がでないのかもしれない。近くの整形外科で低周波を当てたらいいのか?その日は家にあったレトルトを一食食べて寝た。

 三日目は金曜日だった。シャワーを浴びる気になった。ゼミのある日だ。小説ゼミの一年目で、まだジンベイザメさんやにしこりと出会う前だった。小説を読んで感想を言うことになっていた。私は若かったし、なめられるのが嫌だった。革のライダースを着て靴も革で、ショートピースを持って。感想はいつも周到に準備していた。夕方からだったが、また動けなくなることを恐れて昼ごろ大学へ向かった。

 することがないので、部室の前の階段に座って煙草を吸っていた。後ろから声がした。サークルの同期で、うつで通院している子だった。

「久しぶり。部室にいつもいるのに最近いないからどうしたのかと思った。」

「いやー最近身体が動かなくて、ずっと寝てて学校来てなかったんよ。よくわからんけど。」

 自分のことなのによくわからんと言っているのもよくわからんが、普段から言動が飛躍したりおかしい人として認識されていることを自覚していたので気に留めなかった。

「それってうつなんじゃないの。一回病院行ったほうがいいよ。」

 そうか、本で読んだものと確かに症状は同じだと気づいた。中島らもの本でうつについてはよく読んでいたのに、全く考えに上がらなかった。人間自分のことは案外わからないものなのかもしれない。

「ありがとう、行ってみるわ。」

ゼミには出ずに帰った。

 

もう4年前の話になる。